主な業績の要約
慶應義塾大学大学院で自動車ロボット制御システムを研究し、予見制御に関する論文を発表。
1995年にトヨタ自動車へ入社し、24年間にわたり設計・原価企画・製品企画統括に従事。カローラ系のシャシー設計を経て、全社横断のコスト削減活動「CCC21」「VI」を推進し、年間約3,000億円のコスト低減を実現。その後、車両製品プロジェクト全体を統括する「Z」組織にてレクサスRX・NX・UXの開発を統括し、初代NXの成功とともにTNGAの前身となる開発手法(SKY活動)を提案。これにより、トヨタの自動車事業利益の約半分を支えるLexus SUVビジネスの基盤を築いた。
2019年以降は、ペット型ロボット「LOVOT」を展開するGROOVE X株式会社でハードウェア統括責任者として商品化と量産化を成功に導く。
続いて中国の長安汽車(Changan Automobile)では商品企画部門バイスプレジデントおよび海外市場ディレクターとして、海外販売を2年間で約2倍(+57.3%、+37.4%)に拡大。さらに自動運転支援システムを低価格帯車両へ展開し、ブランド競争力を強化した。
その後、長城汽車(Great Wall Motor)では技術戦略企画チーフエンジニアとして主要高額部品の平均20%原価低減と品質基準の刷新を達成。
2024年にAir Beans株式会社を設立し代表取締役CEOに就任。
トヨタで培った原価低減手法とAI技術を融合したAI原価低減支援システム「AICOSTA」を開発し、Leaner Technology社への導入を実現。製造業の価値創造を支援する次世代型コンサルティングを展開している。
1. Air Beans株式会社での主な業績

1) AIによる原価低減支援システム「AICOSTA」の開発
2024年にAir Beans株式会社を設立し、代表取締役CEOに就任。
自動車業界・製造業向けのコンサルティングを主軸に、トヨタ時代に培った原価低減手法とAI技術を融合。その成果として、AIによる原価低減支援システム「AICOSTA」を開発した。
AICOSTAは、時間と労力を要する原価分析や原価低減活動をAIが瞬時に解析し、課題の抽出と最適な改善策の提示を実現するシステムである。これにより、従来は専門知識と経験に大きく依存していた原価改善業務を、誰でも迅速かつ高精度に実行できる環境を提供している。すでにLeaner Technology株式会社で採用され、実務への導入が進んでいる。
2) 製造業全体のプロセス改革とAI×人の協働による次世代ものづくり
AICOSTAによる分析支援にとどまらず、トヨタ流の「原価の畑」思想をベースに、企画・設計・調達・製造・販売といった製造ビジネス全体のプロセスを再設計。
それぞれの領域を個別にAIで支援するだけでなく、これらのプロセスを相互に連携・補完する仕組みとして統合し、AIと人の協働による新たなものづくり改革を提案している。
この取り組みにより、企業は部門を越えた横断的な課題解決と、
全体最適に基づく“経営戦略としての原価低減”を実現できるようになっている。
2. 長城汽車(Great Wall Motor)での主な業績

2024年12月から2025年7月まで、戦略企画チーフエンジニアとして
CTOを補佐し、企業全体の原価・質量・工数の低減戦略を立案・実
わずか6か月間で主要高額部品の平均20%の原価低減を達成した。
また、品質基準の抜本的な見直しを行い、開発から量産に至るまでの
品質保証プロセスを再構築。原価・品質・開発効率を一体的に改善す
トータルエンジニアリング改革を推進した。
これにより、長城汽車のグローバル競争力の強化と
製品開発における持続的な原価優位性の確立に貢献している。
3. 長安汽車(Changan Automobile)での主な業績

2021年8月から2024年3月にかけて、商品企画バイスプレジデントおよび海外市場ディレクターとして、長安汽車のグローバル戦略と商品企画改革を推進。
同社が展開するAVATR、DEEPAL、QIYUAN、CHANGAN、KAICHENGの5ブランドの企画立案・承認を担当し、電動化・知能化・グローバル化の加速に大きく貢献した。
1) 商品企画・開発プロセス改革
- 低価格帯車両にも運転支援システムを導入し、ブランド全体の競争力を強化。
- トヨタおよび欧米メーカーの企画プロセスをベンチマークし、部門内における研修と指導を実施。
- 中国国内で企画した商品を海外に再輸出する従来の手法から脱却し、企画段階から海外市場ニーズを反映するプロセスを確立。
2) 組織構造の最適化と地域戦略の確立
- トヨタ自動車の組織構造を参考に、海外市場を複数の地域部門に再編。
- 各地域の役割分担を明確化し、より地域密着型の商品企画体制を確立。
- Vast Ocean Planのもと、2023年7月に東南アジア事業部を新設、さらに2024年1月には地域統括会社を5拠点設立し、地域主導型の意思決定体制を構築。
3) グローバル販売拡大と市場浸透
- 各地のディーラーカンファレンスでVast Ocean Planの講演・プレゼンテーションを担当。
- 2022年7月:中東ディーラーカンファレンス
- 2023年4月:メキシコディーラーカンファレンス
- 2023年12月:パキスタンディーラーカンファレンス
- これらの取り組みを通じ、海外販売台数を2022年に前年比+57.3%、2023年に+37.4%増加させる成果を達成。
- 中国発自動車メーカーの中で、最も早いペースで海外販売を拡大したブランドの一つに押し上げた。
4) 部品共通化・電動化戦略の推進
- 部品共通化委員会の委員として、自動運転・電動化などに関するシナリオ承認を担当。
- トヨタや欧米メーカーの標準化プロセスをベンチマークし、長安汽車の部品標準化体制を改善。
- プロセスの最適化と目標管理手法の導入により、開発効率と原価競争力を両立させた。
この成果により、長安汽車は中国自動車メーカーの中でも際立ったグローバル展開力と開発スピードを獲得。
井上は、その変革の中心人物として、中国から世界へ展開する長安ブランドの競争基盤の確立に寄与した。
4. GROOVE Xでの主な業績

ハードウェアプロダクトオーナー(HWPO)として、ペット型家庭用ロボット「LOVOT」の開発・設計・調達・製造といった、ハードウェア領域全般を統括。
スタートアップにおける最大の難関とされる商品化と量産化を実現させ、事業拡大の礎を築いた。特に、製品開発から量産立ち上げに至るプロセスを統合的にマネジメントし、品質・コスト・納期を最適化する生産体制を構築。さらに中国での生産立ち上げを成功させ、大幅なコスト低減と安定供給体制の確立を実現した。
これにより「テクノロジーが人に寄り添う新しいライフスタイル」の実現に貢献した。
5. トヨタ自動車での主な業績

1) Lexus Int. Z(製品企画統括部門)での業績
トヨタ全体の事業を統括する「Z」と呼ばれる組織に9年間在籍し、レクサスのSUVプロジェクトを統括。RX・NX・UXの開発を主導し、トヨタ自動車の自動車事業利益の約50%を担う中核事業へと成長させた。
また、TNGAの先駆けとなる新たなコスト低減と開発効率化の手法(SKY活動)を提案し、初代レクサスNXの成功に貢献。この功績は、レクサスブランドの新たな価値創造とグローバル市場での競争力強化につながった。
2) 企画部(EQ推進部、原価企画)での業績
企画部に8年間在籍(うち3年間は北米事業体勤務)。
全社的な原価低減プロジェクト「CCC21」および「VI活動」を推進し、年間約3,000億円のコスト削減を達成。
さらに原価企画の新手法を提案し、30代前半に当時の渡辺捷昭社長へ直接報告を行うなど、若手ながら全社レベルのコスト構造改革に大きく貢献した。
3) シャシー設計部での業績
入社当初7年間、カローラのシャシー設計に従事。
当時一部車両にしか搭載されていなかったABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の全車採用を実現するため、従来構造を刷新した新型ABSを開発。原価を大幅に低減しつつ安全性向上を両立し、事故率の低減にも寄与した。
また、カローラのグローバル開発プロジェクトを通じて、北米・欧州のサプライヤーとの共同開発体制を確立し、トヨタの世界販売台数No.1達成に貢献した。
6. 慶應義塾大学大学院での主な業績
自動車型ロボットの軌道制御を研究。予見制御を用いることで、タイヤのスリップ特性を考慮した高精度な軌道追従制御を実現。従来手法に比べ、コーナリング時の姿勢安定性と軌道精度を大幅に向上させた。

7. その他・モータースポーツ
プライベートではモータースポーツにも参戦。国際Cライセンスを保有し、「86/BRZレース」に出場。2016年の富士スピードウェイ戦では、3位表彰台を獲得する成績を収めた。


